いま一生懸命に作っていますが、知れば知るほど奥深い(紅葉野日記)

こうやって、ちびちびと、メモ帳で作成はしているんですよ。紅葉野日記の続き。でもね、もう少しプライベート的に、沙織ちゃんと美月ちゃんが仲良くなって行けたらいいなあと思うわけなのです。

(タイトル未設定)

お客様へお知らせ

紅葉野電鉄本線 梁瀬駅~岩崎台駅間にて踏切事故が発生致しました。

架線に電気を送る影響で、紅電敷島駅~紅電室山駅間が運転休止になっております。

鋭意復旧工事中ですが、復旧の見通しは立っておりません。

なお、敷島駅~香枚井駅間で葱北本線と室山市電と紅電バスでの振替輸送が実施されています。

お急ぎのところ申し訳ございませんが、振替輸送をご利用ください。

     ◇ ◇ ◇

おなじみ、ゆかいな香枚井登下校組の4人。

「あちゃー、振替輸送だってさ」

「じゃあ、帰りはこっちの敷島駅だねえ」

「なんか最近、事故とか振替輸送多くね?」

「言えてるー」

「なんか、うちらついてない」

「お祓いでも受けた方がいいんじゃない、私たち」

「うーむ」

紅電敷島駅と、葱北本線敷島駅は、左程距離が離れていない。歩いて1~2分のところにある。香枚井方面、麦野原駅行きの快速電車が行き来する。

「杏子先生、また嘆いてたよ」

「おやまあ、どうして?」

「だってさ、紅電梁瀬駅までタクシーで帰らなきゃいけないってこと」

「なるほどね」

「明日は、片道5キロの坂道を自転車だってさ、大変だね」

「あいつは、日ごろお説教しすぎだよ!」

「まったくだ」

「うわっ! なんじゃこの人ゴミ!」

「隅っこの方にいましょうね」

紺と白のツートンカラーの6両編成の電車は、普段より増発しているとはいえ、お客さんを捌ききれない様子だった。

「むぎゅうう!」

「つ、潰されるー」

「もうヤダ、室山駅で降りて、室山市電に乗るううう」

「その方がいいみたいだね、沙織ちゃん」

振替乗車証、というものを4人とも持参しているので、室山市電は無料だった。人もまばらな、葱北本線、室山駅前電停のベンチ。

「はー、やっと室山に帰って来たー」

「お疲れさま」

「はー、かき氷食いてえ、ソーダでもコーラでもいい」

「こら梨音! 買い食いは禁止だぞ!」

「だって、だってさー」

「……わたし、四方堂(よもどう)電停の純喫茶知ってるんだー」

「沙織、それ本当か?」

「うん、うちのお母さんの知り合い」

「じゃあ、今日だけ特別にそこへ寄って休憩するか」

「さすがは美月さま!」

「梨音、今日だけだかんな!」

室山城が近くに見える、鍵掘が見える風光明媚な場所、四方堂電停に、純喫茶「ジュリアン」があった。

「ほんっとうに純喫茶、ってドアだなあ」

「はっとり、行こう! 入ろう! こんばんはー♪」

「あら、誰かしら。香枚井の高槻さん? あなた、中学生以来!?」

「そうでーす、振替輸送の電車がメチャ混みで、疲れましたー」

「まあまあ。そんな事情が。おばさん、おしぼり持っていくから、好きなところ座って!」

お冷とおしぼりを出された4人組は、ボックスシートに収まって、言っちゃなんだけど、だらけていた。

「おばさんも、敷女OGなの。だから、事情は分かっているから、学校には内緒にしてあげます」

一同「ありがとうございます」

「はっとりは、何にする?」

「あー、わたしー? 疲れたから、アイスコーヒー無糖で4人前」

「珍しい。わたしは、ミックスジュースでいいかな、はい、梨音ちゃん」

「わたしは、宇治金時! はい、桃花、メニュー」

「そうだね、わたしは、プリンアラモードで」

「はいはい」

そう言い終わると、ジュリアンのおばさんは、ペタペタとスリッパの音を響かせながら、厨房に入ると、家政科卒のパフォーマンスを発揮して、年齢にそぐわない、見違えるような全速力でそれらを作り上げるのだった。

「あ、テレビでニュースやってる」

「本当だ」

「何をどうすれば電車があんなことになるのだろう……」

「乗り合わせてなくて良かったね」

「はい、先にドリンクメニューのお客さん、どうぞ」

沙織・美月「うわあ、ありがとうございます」

梨音「電車、すごいことになってますねえ」

おばさん「そうね、明日も来てくれてよくってよ」

梨音・桃花「いえいえいえいえ、さすがにそういうわけにも」

おばさん「そこのお二人さんは、もう少し待っててね」

そう言うと、またペタペタと厨房に入っていくのだった。お客さんは、いまのところ4人だけ。美月のところには、アイスコーヒー4人前。沙織のところには、ちまっとミックスジュース。

沙織「はっとり、なに、その量……」

美月「あー? ヤケ飲み」

梨音「美月さんって、絶対に社会に出たら呑み助になるほうだよね」

桃花「そうだよね、なに、その量」

美月「はー、この悩みは、引率者以外には分からない悩みだったりする」

沙織「そういうもんですかねー、はっとり」

美月「ちゅー、ちゅーちゅー、ごくっ、ゴビゴビ、ごっくん、ぷっはー! 美味しいね、沙織、ここのコーヒー」

沙織「でしょ?」

おばさん「はい、プリンアラモードと、宇治金時お待ちどう!」

梨音・桃花「はーい!」


……と、一事が万事、このような調子で繰り広げられる、何があっても負けない、室山県立敷島女子高等学校普通科1学年の生徒さんたちでした。

田所稲造 拝

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